福岡地方裁判所 昭和45年(ワ)343号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕第一、本案前の主張について
本訴は原告らが訴外会社に対する交通事故による損害賠償の債権者としてこの債権を保全するため、その債務者たる訴外会社の被告会社に対する原告ら主張の保険金請求権を代位行使するというのであり、このことは原告らの訴状の記載に徴して明らかである。そして被保険者の交通事故による損害賠償義務発生を前提とし、一定の契約条件の下にこれに対して契約による保険金を給付すべき任意保険においては、保険会社が承認した賠償金額または確定判決による被保険者の賠償債務額が保険金額の範囲内である限り被保険者の資力のいかんを問題とすることなく保険金の請求があればその支払に応ずるのを建前としておりかつ右請求が被保険者の事故被害者に対する賠償義務履行のためなされることからみてこれを実質的にみればこの場合の保険金は被保険者の介在のもとに保険会社から被害者に交付されるべきものといえないこともない。
してみると、交通事故被害者の加害者に対する損害賠償債権と加害者である被保険者の保険会社に対する保険金請求権は密接不可分の関係にあるものというに妨げない。したがつて右保険金債権を目的とした債権者代位訴訟においては右のような損害賠償債権は金銭債権ではあつても債務者の資力のいかんを問題としない特定物の給付を求める債権に準じて取り扱うのが妥当である。されば、本件において、原告らが自己の右債権を保全するために訴外会社の前記保険金請求権を代使行使するのに、債務者たる訴外会社の資力の有無によつて何ら影響を受けるものではないということになる。しかも、前記保険金請求権が原告ら主張の原告らと訴外会社間の責任訴訟(当裁判所昭和四三年(ワ)第六六号事件)の判決確定によつて始めてその権利を行使し得るものと解すべきところ、右判決確定後訴外会社において被告会社に対し前記保険金の請求をなした点について何の論証もない。もつとも、被告会社は訴外会社から保険金請求の訴(当裁判所昭和四二年(ワ)第六六八号事件)があつたと主張するが、たとえそのとおりであつたとしても、前記責任訴訟の判決確定に至るまでは権利行使の余地なく、右保険金請求訴訟をもつてその権利行使というわけにはいかない。(木本楢雄 富田郁郎 横田勝年)